どうしよう!暗証番号をド忘れしちゃった。
私に物心がつく頃から父と母は仲が悪かったらしく、将来離婚するつもりのようです。父のことが嫌いになったきっかけはいくつかあるようですが、特に1番怒ったのが、私がまだ生まれたばかりの頃、父が酔っぱらって屋外で寝て、通勤かばんごと自宅の鍵を第三者に奪われ、そのまま私と母が寝ている自宅に、居空きに入られたことだそうです。母の独身時代から所有していた貴金属やブランドのバッグなどを奪われ、寝室の扉も一瞬開けられたということですから、強盗になっていた可能性もあります。金品を奪われたという物理的被害の他、私たちを守るどころか、命の危険にさらしたということが、父との関係を壊した出来事だったようです。
家庭内別居状態の父と母ですが、母は毎月少しずつ、父の給料からへそくりを貯めています。母は元々実家が裕福なため、今すぐ離婚しても私と母の生活はある程度保障されているのですが、母はそれでは面白くないので、離婚の際にはそれなりの財産分与を父に求めるつもりだそうです。更に離婚の時までにある程度まとまったお金を残せるよう、毎月へそくりしているのです。そしてそのへそくりや銀行関係の印鑑の保管を、父に気づかれないように家中で定期的に場所を替えています。ところが、その置き場所を、よく忘れてしまうのです。そのたびに大騒ぎになり、私は母と一緒にその隠し場所を毎回探させられるので、いっそのこと、銀行の貸金庫に預けてはどうかと提案しました。
銀行の貸金庫と言うとドラマで出てくる、お金持ちの人が利用しているシステムというイメージで、母もまんざらでもなく、それならどこの銀行にしようかと前向きに検討し始めました。でも、すぐに私の方が思い返しました。母のことだから今度は、どうしよう!暗証番号をド忘れしちゃった。と騒ぎだすに決まっています。それなら家の中でトラブルが片付く方がまだマシです。これからも鍵探しに付き合いたいと思います。